コロナ禍

つい先日まで「コロナ渦(うず)」だと思っていた。夫に「何て読むのかな?」と聞かれなかったら一生間違えたままだったと思う。このところ毎日のように目にしているのに、尚かつ日本語を扱う翻訳者の端くれとして実にお恥ずかしい。という訳で調べた。夫と同じように「何て読む?」と思う人が多いのだろう。説明の記事などがたくさんヒットした。

 

正解は「コロナか」。

 

「禍」の訓読みは「わざわい」。2020年は東京オリンピックもあり、なんの根拠もなく平和で明るい1年になるだろうと思っていたら、世界中の人々がウイルスにおののき、不安の「渦」の中で家で「過」ごしている。 だから「コロナ渦」とか「コロナ過」などと間違えても致し方ないだろう。と自分を少し慰めたところで、本題。

 

自粛生活を送る中で「マヨネーズの瓶と2杯のコーヒーとゴルフボール」の話を思い出した。ご存じの方も多いと思うが、知らない方のために簡単に説明する。(※知っている方は読み飛ばしいただければ。)ある大学で哲学の授業が始まると、教授がマヨネーズの空瓶にゴルフボールをいっぱいまで入れて学生に聞く。「この瓶はいっぱいか?」生徒は「いっぱい」と答える。教授は次に小石をゴルフボールが入った瓶の隙間に入れ聞く。「この瓶はいっぱいか?」生徒は「いっぱい」と答える。更に先生は砂を瓶の隙間に入れて聞く。「この瓶はいっぱいか?」生徒は「いっぱい」と答える。最後に先生は二杯のコーヒーを取り出して瓶の中に流し込んで、とてもいい話をする。かなり端折ると、ゴルフボールは家族、生きがい、趣味、情熱など人生で最も大切なこと、小石は仕事、家、車など人生で次に大切なもの、砂はさらにその次に大切なもの。そしてどんなに忙しくてもコーヒーを飲むくらいの時間はできる。最初に小石や砂を入れていって瓶の中を満たしてしまうと、人生で本当に大切なこと(ゴルフボール)に時間を割くことはできない。だから、まずはゴルフボールを入れてから、必要な小さなもので満たしてほしい。そして、どんなに忙しい人生の中でも、友人とコーヒーを楽しむ余裕はあるものだ。 というお話。コーヒーのくだりはビールに差し変わったりしていることもある。

 

聞いたときはとても素敵な話だと感動した。しかしこの度、誰もがこの人生と言う名のマヨネーズ瓶を一度真っ逆さまに、ひっくり返し内容物を入れ直すことを迫られている。しかも、どうしても先に入れたいゴルフボールのいくつかは入れることができない場合が出てきている。当然ながらできてしまう隙間に本来は友人と楽しむべきコーヒーやビールばかりを1人で注ぎ、瓶を満たそうとして溺れかけている人までいるんじゃないだろうか。実は私もそうなりかけている(恥)。長引きそうなニューノーマルを乗り切るためには、新たなゴルフボールを用意する必要がありそうだ。幸い私の仕事は元々STAY HOMEが基本なので「コロナ禍」の影響は大きいとは言えないかもしれない。さらに3月の終わりに子犬を飼いはじめ、隙間を埋める重要なゴルフボールを1つ確保している。仕事の締め切りに追われながら、犬の世話をしてあっという間に5月になった。とは言え少しの買い物にもマスクや消毒が必要で、趣味のバレエレッスンに行けない、友人や翻訳者仲間にも会えないのはやはりツラい。仕事ばかりで、体はガチガチになまっている。開設するだけして半年以上放置していたこのブログ。新しいゴルフボール探しをするべく投稿を開始してみた次第である。

 

                                                        令和2年5月17日

 

読んでいただきありがとうございました。